2014年7月11日金曜日

飢えと渇き




辞書的な差異を明確にすることに意味は無い。
飢えれば固形物、渇けば液体系ではあるが、
イメージ的には、前者は下部構造的であり、後者は上部構造的だと思える。
飢えは物欲が満足されれば一端は収束するが、
渇きは精神的であり、癒えることは難しい。

かのスタイリッシュな吸血鬼映画は「ハンガー」だった。
バンパイヤーさんは、生き血が主食だから「飢え」でも矛盾はない。



失踪した優等生藤島加奈子
追い求める元警部補の父親
真相なるものに近づくほどに「渇き」は肥大化し癒えることはない・・・
肥大化する「渇き」はより激情化・暴力化する。


深町秋生の「果てしなき渇き」が癖のある監督と役者の手で映画化された。
映画って一時の慰安と享楽を提供するだけの娯楽で癒しの道具なのですが、
エンドマークの向こうには「絶望」しか提供できない作品であり、
それをもってお客様からオアシを頂戴しようとするのは不届き極まりない(苦笑)


シネコンでも初日だからか大きめのスクリーン上映
アート系単館ロードショーが似合いそうな・・・(苦笑)
出来は悪くはないが、そもそも陰惨すぎるし、賛否両論かもしれない。
しかし、使用する音楽のセンスだけは、邦画してはよく出来ています。



原作は深町秋生の「このミス大賞」受賞作。
山形県出身の若手のハードボイルド系の作家さんです。
八神瑛子シリーズがすこしだけ有名です。
刑事って「オンナに向かない職業」だと思うのですが、かかるがゆえに
そこそこミステリー系では・・・八神以外でも


姫川玲子
音道貴子
河野明日香


みなさん、それなりに影や闇をもっているのですが、
夫殺しの真相究明のためにはなんでもあり。
どこで原資を工面したのか不詳ですが、上司同僚相手の闇金稼業で
警察組織を壟断してまで・・・
しかし、この映画には女デカなんかは及びではない。
蓮っ葉な高校生や半グレは大量に登場しますが、
刺や毒しか持ち得ないような登場人物ばかりです。
悪人しか登場しないキタノ映画に範をとったのですなあ。


 
映画化される際に「果てしなき」をとっちゃいましたが、
だからといって「渇きに終焉がある」わけじゃない。
後味が悪いですなあ。
藤島加奈子殺しの真犯人が一番善人に見えます(笑)



0 件のコメント:

コメントを投稿