2014年7月16日水曜日

考古学的人情調査

オフィスからは、青山通りを越えて、赤坂御所を横目に、明治記念館、信濃町駅をとおりすぎ、
お気に入りの雲南米線のお店から四谷三丁目は目と鼻の先。
新宿通りを過ぎ、曙橋の新宿通りまでの東側一帯にその街はある。
さるお大名のお屋敷跡だったらしいし、
家康が馬の鞭を洗ったという策の池なるものの面影は想像すべくもないが、
アップダウンのきついこの辺りは、かつては有名な花街だった。
その残り香とどめるように、小洒落たお店が集積している。
予約でしか入れないセルフサービスの居酒屋とか絶品の穴子料理屋とか・・・
夕涼みがてらに彷徨うだけでも楽しいが、
バブル開発の残渣も同時に見かける。


四ツ谷荒木町

十五年前に芸妓上がりのアパート経営の老女が殺害された。
土地取引を巡るトラブルと思われたが、事件は迷宮入り。
とあることから、干された刑事が、事件を掘り起こす羽目になる。

佐々木譲さんは、目の行き届いた警察小説を得意とする。
なんとなく、道を踏み外したような刑事たちが地道に愚直に活躍する道警シリーズ関連は、
貴重な読書時間を費やすほどのものではないが、
ちょっとした息抜きには手頃である。

このような街は、都会の割りに濃密な人間関係が残っており、
ドロドロした人間模様の果てに、隠しておいたものが次々に露わになる。

タイトルの「地層捜査」とはうまいネーミングだ。
粘着質な考古学者発掘現場を垣間見る思いがする。
しかし、忘れてしまいたいような過去をほじくり出して実現する正義とは一体なんなんでしょう。
個人的には時効制度の廃止には賛成しかねるのですよ。
正義のあくなき実現という大義は、大義であるが故に胡散臭い。
被害者感情への過度の思い入れ・・・とまで言えば言葉が過ぎるかもしれない。
世の中、全てにシロクロ決着をつけねばならないってことばかりでもない。

シリーズ第二作目も刊行されました。

舞台は・・・・代官山

今はおしゃれな街で通用するが、昭和初期は雑木林だらけで、
闇夜には鵺がなくような場所だったらしい。


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