2018年4月4日水曜日

沢崎という探偵(2)




探偵小説なぞと言う表現は死語に近い。
昨今は、推理小説よりもミステリーのほうが幅をきかせる。
十年ばかり前に「探偵業務適正化法」が施行され、
探偵の仕事に規制がかかった事がその理由...であるわけがない。
ひとえに探偵と言う職業人の造形に行き詰まり、司法職員にその座を奪われたことによる。

捜査機関をアゴで使うような上から目線な天才肌は
作りものすぎて面白みに欠ける。
警察との対立関係あるいは緊張関係がある方がいい。
探偵業のキャラクターは何処までいってもハードボイルドタイプの
域を出ない。
だからいきづまり、機軸をかえてはみるが成功しない。

業法の上では、やっていることの大半は浮気調査だと言われるが、
法律の範囲内にとどまれば、小説にはならない。
探偵業者は公安委員会に届出が必要で、その数は六千あまり。
法人が多く、資格、学歴の規制がないから、探偵の数は
更に多いが、典型的3K職場だから人気度は低い。


原寮さんの「そして夜は甦る」を再読する。
文庫版ですが、97年に買ってます。
単行本初版が80年代末ですから、永らく存在を知らなかったのだろう。
更に文庫版が二冊書庫にある。
その後刊行された作品は単行本でもってますから、
取り憑かれたようです(^-^)
単行本から文庫化には数年要しますから、待ちきれないのですよ。

処女作とは思えないつくり
登場人物の全てに神経が行き届いています。
直木賞をあげても当然だが、次回作まで我慢したのが選考委員たち。
翌年の「私が殺した少女」で予定調和の実現。

そこから、作者は寡黙遅筆な世界に埋没する。
十年単位での作品の発表はファンを焦らせすぎ。
時間の流れと共に主人公も年齢が重ねた。
ゴルゴ13は歳をとらないが、沢崎はもう五十代
何時迄も続けられる職業じゃない。
最新作では、後を継ぎそうな若者が登場したかに見えたが、
そんな子供騙しなプロットではなかった。


しばらくは再読三昧の日々だ。

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