2021年1月3日日曜日

長いナイフの夜

 



三島由紀夫が映画「地獄に堕ちた勇者ども」に触発されてかの戯曲「我が友ヒトラー」を書いた....訳ではなかったが、この映画を激賞したことはさもありなんと思いますわ。

ヒトラーの権力奪取の過程は、国会議事堂放火事件を共産主義者を犯人に仕立て上げる事で左翼を壊滅に追い込み、ナチス党内の左派や国軍の支持をとりつける為に邪魔になった右派な突撃隊幹部に対する白色テロ...世に言う「長いナイフの夜の事件」で一応の区切りがついた。


戯曲では、クルップ(製鉄業界の大物)のセリフ

アドルフ、よくやったよ
君は左を斬り、かえす刀で右を斬ったのだ


なんだか産業に政治が翻弄されるかのような印象をもつ作品だし、けだし「鐡は国家」なのです。
政治という醜悪怪奇な世界はクルップの掌上で動いている....まででなくとも産業をグリップした方が勝者となるのです。



ヴィスコンティの傑作映画では、グリップ一族と思しき製鉄王一家内の陰謀にフォーカスが当たります。

ナチス嫌いの男とその妻
国軍・親衛隊派
突撃隊派

三つ巴の支配権争いの果ては、歴史が示すように反ナチスの家族は収容所に送られ、突撃隊シンパは皆殺し.....
一家の財産は淫蕩自堕落な若者のものとなるが、親衛隊の傀儡に過ぎず、、、神々の黄昏がすぐそばまで忍び寄る予感のなかお話の幕は降りる。




あの「ベニスに死す」と同じく、これもトーマスマン的な世界です。

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