2019年8月29日木曜日

治人治法



身分ではなくて能力でヒトを選ぶ...実に素晴らしい(と思えます)
18世紀の西洋では、明清の官僚選抜制度を知るやその革命性に
絶句し...多分その残滓はグランゼコールの試験制度に残っている。

確かに統治の妙はヒトにありルールではない。
ヒトは変われば終わりだが、ルールは多少永続的。
だが、あれかこれかと二択問題に還元することは正鵠を得ていない。

六世紀末から二十世紀の初めまで、中華帝国の背骨とも言うべき
官僚選抜制度が科挙
世界に君臨しえた理由のひとつ...とされるが、さあどんなものでしょう。
身分出自性別に関わらず公平無私にヒトを選ぶまではいい。
問題は選び方...出題傾向


その前に...絶対独裁者の統治には意のままに動く官僚機構が不可欠。
元は同輩だった世襲貴族出身者なんか危なくて使えない。
いつ寝首かかれるか分からないし、三代目は家を売るていたらく(^.^)
俺の手で選抜したヒトザルが俺の手足となるんだ!
隋の煬帝が考えそうな事
世界に先駆けて中華帝国で制度設計ができた事には
歴史的必然があるのですよ。


宋代以降の朱子学の官学化がワルサをする
教条化した朱子学的訓詁学だけの知識があれば、高級官僚になれる。
早々と「選び方」の弊害が出てくる
しかしとてつもなく努力と時間と費用がかかりますから、
だれにでも門戸が開かれている...と言うのは幻想。
能力があっても先立つものが..

富裕層ならば、腕の良い家庭教師を雇って勉強漬け
かといって、富裕層の子弟がアタマがいい...正確には
記憶力と習字に長けているとは限らない。
次なる手は、一族郎党の中で見どころありげな奴に投資。
当然見返り期待で、それが宿痾とも言うべき朋党政治を生む。
それを思えばお友達政権なんて可愛いもの

頭デッカチでスポンサーに頭の上がらない「優秀な」官僚群
ろくなことにはならないはずが...
稀に優秀な独裁者が帝位につくと、元々は頭のいい連中
統治がうまく回り出す。
清帝国の全盛期は、康熙、雍正、乾隆と三賢帝の時代。
中国人民にとって過去も未来も含めて一番幸せだった時代。

高級官僚は科挙出身者独占ではない。
ノンキャリア優秀者や買官でのし上がった志人もいた。
このあたりに自在に抜擢するのが良き独裁者。

残念ながら、稀だし偶然に統治の巧拙を任せてはいけない。
紀元前後の中国の戸籍登録人口は五千万人くらい。
同じ時期の倭国は30万人。
それから二千年で...
倭国は四百倍にふえますが、中華帝国は...
お互いにこれから人口は減っていくそうですから、勝った負けたなんて
つまらない議論。

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