2020年12月10日木曜日

虚実皮膜の間

 


近松の有名な言葉。芝居という絵空事の真髄。

多くの真実の間に少しだけ嘘を忍び込ませる...多くのヒトザルを長く騙す鉄則。短期間でよければたくさんの嘘でも構わないが、あまり感心はしない。

この辺りの技巧力は、塩野女史に如くはない。

なんちゃって全編嘘の塊でアタシを騙したのだ!

まことしやかにカエサルがクレオパトラに宛てた恋文なんかを捏造したのがこのメスザル。実によく出来ている。騙された方が微苦笑を浮かべて感心させてこそ、嘘の藝術性!

李文亮肺炎蔓延のイタリアン。女史はバカンスにもいけないもので、暇な時間で旧作に多少手を入れて「小説イタリア・ルネサンス」と銘打ち上梓。

唯一の歴史小説との触れ込み....前回は初めての推理小説なる惹句。取るに足らない殺人事件をあまり言挙げするものではない。小説というからには、5W1Hの何処に虚構がある。明らかにローマからやってきた高級娼婦のオリンピアはそれっぽい架空の人物。主人公のマルコ・ダンドロを実在と勘違いしたアタシがあほ。たしかにダンドロ家は元首を出すほどのヴェネツィアの名門貴族。その若き当主っていうから...中途半端な知識は役に立たないよりも、むしろ害が多い。

この二人の恋愛は第三部で破綻することになりましたから、旧作では悲恋の果てってことで幕。

ヴェネツィアで出会い

フィレンツェで再会し

ローマで永遠の別れ......一昔前のハリウッドのメロドラマ。無論、マルコもオリンピアも美男美女の設定です。


しかし、十六世紀イタリアって大変な時代だったのですなあ。

オスマントルコが牙を剥いてくる

スペインやらフランスが虎視眈々とイタリア簒奪を狙っている。地政学的に如何に乗り切るのか?って実に難しい高等算数。それなりに上手く立ち回ったと思います。そうでなければもっと早く絶対王権に屈したはずだ。まるでどっかの島国と同じで、経済力(貿易力)が国家の背骨。大きくちがうのは傭兵に頼らず自国は自己の防衛力と外交力で守るという強い意思!

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