香具山は 畝火ををしと 耳成と 相あらそひき 神代より かくにあるらし
古昔も 然にあれこそ うつせみも 嬬をあらそふらしき
男女の微妙な関係は「オトコ二人にオンナ一人」が美しいとは毎度の愚説
この大和三山の恋の物語もなかなか含蓄が深く「ををし」の解釈いかんで景色が変わる。
どっちの組み合わせの恋の物語かはさておき・・・・こんな美味しい素材を能にしないはずがないのですが
幻の曲とされ、やっとこさ昭和60年代に観世銕之丞師が復曲能として披露した。
素材がよければ、人気も出る。
復曲能らしからぬ人気で・・・お稽古曲に困った素人能楽師の練習曲と相成ったのはこれで二回目
この曲も「春」の曲とされます。
ドロドロ痴情のもつれは、オトコ一人にオンナ二人に限ります
香具山がオトコ
畝傍山がオンナで名は桜子
耳成山もオンナで名は桂子
最初は公平に愛していたようですが、慎ましげな香りの芳しさよりも華やかな花のかんばせにオトコは弱いのは万葉の時代も同じか(笑)
どうせ一時の華やぎなのにねえ
捨てられた桂子は、哀れ入水自殺と相成った・・・
三角関係の清算のためオンナが命を絶つのは古典的所業で、
有名なのは・・・
真間の手古奈
求塚
いずれもいいオトコ二人に言い寄られて進退極まりってことです。
若干シュチュエーションは違いますが
文覚上人と袈裟御前、、、とか
兄妹心中の信吾とお菊
もよく似てますが、紅涙を絞るような乙女の純情・・・・なんて今時は流行らない。
しかし、捨てられたオンナだって黙っちゃいない。
あの高貴な六条御息所だって、生霊となって葵上に取り憑いたのですから、桂子の死霊は桜子に祟ること祟ること
爛漫の桜花のはなやぎも春の嵐に短くて
これぞ、桂子妬みごころ
というしつらえ。
もっとも、痴話喧嘩はお互いが爪を立て髪振り乱してつかみ合い・・・というのが相場
桜子だって、打たれっぱなしってことでなく、
お互いが、桂の枝、桜の枝を優雅にも打ち合う様となる。
能は予定調和的にハッピーエンドで終わることになっていますが、
だからと言って、いつまでも桜花が咲き続ける訳じゃない。
落花を愛でる(惜しむ)とは、悲劇のヒロイン桂子への愛惜の念でなければならないって新しい風情の発見です。
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