岩波文庫版(六分冊)も佳境を通り越して、三十九巻まで来ました(全四十巻)
延々と宮方(南朝)と将軍方(北朝)の覇権争いに加えて、足利一門の権力闘争が加わり、裏切りや寝返りの連発。
注意して読まないと、、、この武将は今どっち方だっけ?
太平記的歴史観が中世の歴史認識を歪めてしまったと思っているが、反面綺麗事ではないヒトザルの生きようが活写され実に面白いが、ネトウヨ的な識者はそんな事には目をつぶる。
この巻で、ふむふむと思う文節を取り上げるに、、、
上智は少なく下愚は多し
わずかに欲心を貪れば味方になるも早く、些かも恨みあれば敵になるも易し
世上の毀誉は善悪にあらず、人間の用捨は貧富にあり
楠木正成的な「愛国忠臣、七生報国」なんて絶滅希少種だって事がよくわかります。
忠義に殉じた武将ってはやい話が、不器用な生き方だったと改心する前に討ち死にしてしまっただけみたいって思えてきます。
算盤ずくで旗色を決める事は賤しく、滅びの美學を演じる事はヒトザルの琴線に触れる事はたしかなんですが、そんな「上智」な人物は少ない。
正成には子息が三人いましたが、長男(正行)と次男は四條畷の合戦で敗死。父親同様に義に殉じた結果となり、長男には「小楠公」の美称まで。
その後、三男の正儀は南朝の重鎮となったが、南朝内部の政略路線の争いからか南北朝時代末期には寝返りや裏切りを繰り返した(、、らしいが、太平記はその史実には沈黙します)
大楠公の子息のかような振る舞いは、まことに不都合な史実だということ。
北朝から南朝への転向は数多語られるが、その逆はまずないことになっていますが、そもそもがオセロゲーム。そんな馬鹿なはなしじゃゲームは何十年も続かない。
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