2021年2月25日木曜日

時代の寵児

 



希代の才人
さすがに赤門の国文(普通は日本文学学科といいますが、彼には似つかわしくない)
有り余る才能を...有り余るが故に過剰浪費して命を縮めたオトコですが、歌舞伎なんかの江戸前文学のナビゲーターとしてはアタシは一番信頼しています。
むろん、王朝文学の私家版....桃尻まくら草子や窯変源氏も、アタシに新しい理解の地平を示してくれましたし、結構感謝。

個人全集が刊行されれば...多分買い揃えるだろう。


橋本治著「浄瑠璃を読もう」


でも...浄瑠璃って
三味線伴奏楽器として太夫詞章ししょうを語る音曲・劇場音楽...というのが辞書的な解説
これがアカペラならば、謡本もそれに近い。

ですが、いまや音楽として鑑賞するよりも人形芝居や歌舞伎のバックミュージック。
なんにしても、よくよく台本を読めば、アタシの大好きな言葉遊びの世界。
しかし今風上演の際にはかなり換骨奪胎されますから、原典をまず読んで...



今日は「仮名手本忠臣蔵」のこと
大作の通し狂言ともなれば、山場だけのつまみ食いだし...
そもそも我々の知ってる赤穂浪士なんて...

高田馬場で安兵衛が暴れたり
一夜で千畳の畳替をやったり
神崎与五郎が馬子に詫び証文書いたり
なりすまされた日野家用人垣見某がワザと見逃したり
雪の南部坂に浅野未亡人を訪ねたり

とかなんとかな見せ場は浄瑠璃本には全く出てきません。
鎌倉時代や室町時代を舞台設定にするのは常套ですし、
高師直が塩治判官夫人にセクハラ、フラれた怨み(史実的には兼好法師の代筆の腕が悪かったとされます)から判官にパワハラ..なんて史実を上手く折り込んでいます。
舞台には鎌倉は出てきますが、江戸のかけらもなく、上方が主戦場。
ロジスティックを担当した天河屋義平は堺の商社マンで、なんとまあテロリスト集団は、天河屋が手配した輸送船に便乗してLCUで上陸し敵を制圧しちゃうんだわ。



要するに、思慮も忖度も無く会社潰したバカ社長譚に過ぎないし、代貸はさておき、トップがアホだと部下も部下。大事な業務中にサボって尻軽なOLと多目的トイレにしけ込む秘書課員。あまつさえ事態の大きさに狼狽し駆け落ちなんかしちゃうんですから、悲劇仕立てするのも一苦労です。
この浄瑠璃の主役は代貸の大石内蔵助であることはその通りですが、この軽薄な二人...おかる勘平に結構な出番があるってへんてこな話です。

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