医学辞典的には...
神経症の一種。
客観的にはなんら身体的異常が認められないのに、頭痛、めまい、胃が重い、脱力感など、主観的にさまざまな異常を感じて、病気ではないかと気に病むことを特徴とする...
近代的な病理と言われるが、中華古代の列子の天瑞編に曰く
杞の国に人の天地崩墜し身寄する所亡きを憂えて寝食を廃する者有り。
又彼の憂うる所を憂うる者有り。因って往きてこれを暁して曰く、天は積気のみ。処として気亡きは亡し。屈伸呼吸の若き、終日天中に在りて行止す、奈何ぞ崩墜を憂えんや、と....
中華故事成句である「杞憂」の事であり、無用の取り越し苦労で身を危うくすることを戒めるものである。明治に西洋医学が持ち込まれた際に漢学の知識があれば「杞憂症」と翻訳したに違いないが、卑俗な命名となったのは残念な事である。
19世紀の英国に....タイトルは失念したが、テムズ川下りでの紳士達の会話小説がある。その紳士のひとりが杞憂症らしくてあちこちの医者にかようのですが、ある医師の処方箋によれば
毎日のウォーキング
三度三度に適量のステーキとビール
早寝早起き
実に面白いが、この時代とはアッパークラスが「運動」に勤しむようになった時代。下流民は労働で身体を酷使するからスポーツなんかには無縁。アマチュアリズムの濫觴とはそういうものであり、そのあたりは映画「炎のランナー」に詳しい(1924年のパリ五輪が舞台)
五輪出場選手である貴族の若者がいる。居城の芝生にシャンパングラスを載せたハードル毎に従者を立たせて練習に勤しむ...実に本来のアマチュアリズムとは典雅なもの。しかし同僚の出場選手の種目が安息日に当たり宗教上棄権を余儀なくされ...彼は自分の種目をその選手に譲り....まあ映画ですから金メダルに輝く。実にアマチュアリズムとは素晴らしいのですが、肝心の感動箇所は実話ではないものの、英国映画界の金字塔。ロンドン五輪の開会式でもその映像の一部が流されました。
実は公式記録映画以外のオリンピック映画の世界は実に貧相であまりにつくりものめいた作品ばかりで見るに耐えない。この世界での最高峰がこの映画だし、事実オスカーの作品賞でもある。あまりにも商業主義的でないストイックなオリンピックが描かれて好評を拍することは...IOCとしては痛し痒しなんだろう。
さて、、、河合直美さんが鋭く切り裂くような記録映画を作る事を期待しているんですがねえ....
0 件のコメント:
コメントを投稿