物名歌なる言葉遊び技法が王朝和歌にはある。
正岡子規ならば、これでもか!ってくらいに悪口雑言を浴びせるんだろうが、これも和歌の理知性のあらわれ。
王朝和歌は何かにつけて「二重構造化」するのがお好き。春のうららかな風景を詠みながら、初恋が進展する内省風景をかたる、、なんてお手の物。
その延長線上に、一首のなかにいくつかの「モノの名前」を織り込んだのが物名歌。
隠し題の異名がありますが、もののなうた、ぶつめい...なんと呼ぶのが正しいのかは知らない。
例えば....普通は「モノの名前」を隠すのですが、逆だとこうなります(^^)
虻蝶きは 蜘蛛に蜉蝣 蟻あけに
か蝉螺蠧魚て 蛙さ蚤ち
なんとまあ、三十一文字のなかに、十種類の「蟲名」を折り込み、その文字数たるや過半以上の二十文字
けだし超絶技巧。
作者は、頓阿。14世紀の歌僧
表意文字だけをながめていますと、和歌のダークサイドを観る思い。
しかし、このグロテスクさを隠すオモテの顔は...
逢ふて憂き 雲に翳ろふ 有明に
風身に沁みて 帰るさの道
恋人のマンションで一夜を過ごして、始発電車で我が家に帰るアタシ
逢った後の別れが辛い...今度いつあえるかなあ?
露けき朝の風がこころに沁み入るなあ
空には朝焼けの雲
なんとも気恥ずかしいようなウルウルな風景です。
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