2021年7月18日日曜日

もののなうた

 物名歌なる言葉遊び技法が王朝和歌にはある。

正岡子規ならば、これでもか!ってくらいに悪口雑言を浴びせるんだろうが、これも和歌の理知性のあらわれ。




王朝和歌は何かにつけて「二重構造化」するのがお好き。春のうららかな風景を詠みながら、初恋が進展する内省風景をかたる、、なんてお手の物。
その延長線上に、一首のなかにいくつかの「モノの名前」を織り込んだのが物名歌。
隠し題の異名がありますが、もののなうた、ぶつめい...なんと呼ぶのが正しいのかは知らない。


例えば....普通は「モノの名前」を隠すのですが、逆だとこうなります(^^)


虻蝶きは 蜘蛛に蜉蝣 蟻あけに

  か蝉螺蠧魚て 蛙さ蚤ち


なんとまあ、三十一文字のなかに、十種類の「蟲名」を折り込み、その文字数たるや過半以上の二十文字

けだし超絶技巧。

作者は、頓阿。14世紀の歌僧

表意文字だけをながめていますと、和歌のダークサイドを観る思い。

しかし、このグロテスクさを隠すオモテの顔は...


逢ふて憂き 雲に翳ろふ 有明に

  風身に沁みて 帰るさの道


恋人のマンションで一夜を過ごして、始発電車で我が家に帰るアタシ

逢った後の別れが辛い...今度いつあえるかなあ?

露けき朝の風がこころに沁み入るなあ

空には朝焼けの雲



なんとも気恥ずかしいようなウルウルな風景です。






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