安っぽい今風のトラベルミステリーもどきなネタを書こうとしているのではない。
九世紀の頃の宮中住み込みのキャリアウーマン。歌才抜群の絶世の美女...だったそうだが、出自は不明。
退職後は剥落流浪。
末路哀れということですが、能楽の小町ものはこの辺りの落魄さを素材にする。
例外は絶頂期の小野小町が登場する「草子洗小町」だけ。
小町歌集なるものがあり....でも自撰歌集ではなく後世誰かが編纂したものだから偽歌が相当にコンタミされていると言われ、マトモに彼女の作とされるのは古今和歌集やら勅撰集収録歌くらいなもの
しかしなあ....
この勅撰集は結構いかがわしいのですよ。
総数千余首のうち四割が「よみ人知らず」
作者の名前を伏せるそれなりの理由がある場合もあるが、四割はあまりにも多すぎる。
やはり(識者の言うように)歌集全体の構成の都合上紀貫之以下の撰者の自詠が多数匿名で混じり込んでいると考えるのが妥当だ。
また、撰者達の美意識からか原作を結構「改竄」していますし、これは勅撰集の常套のようです
はかなしや 我が身の果てよ
あさみどり野辺にたなびく霞とおもへば(小町集)
あはれなり 我が身の果てや
あさみどり ついには野辺の霞と思へば(新古今)
哀傷の歌ですが...塚本邦雄の評価では改竄改悪と断じており、オリジナルの窈窕としたもの哀しさが素晴らしいと......アタシにはなんとも
言える事は明白なパテント侵害!
この時代、著作権概念が確立していたのかどうかは知らないが、少なくとも盗作は罪悪であった。
草子洗小町にはなしを戻しますが、
この人気曲の醍醐味は、宮中での紅白歌合戦で紅組のトリたる小町を貶める為、白組の悪辣な大伴黒主の策謀(小町の詠進歌を事前に盗み出し、それが盗作である証拠をでっち上げる)と絶体絶命の小町の土壇場の逆転劇とかなんとかのスリルとサスペンスにあるのです。
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