2018年8月8日水曜日

蔵書一代



汗牛充棟な書庫は、夏も冷ややかな知の体感温で過ごしやすい。
しかしなあ....

森鴎外が渋江抽斎に興味を持ったのは
神田古書店街に並ぶ彼の蔵書印を押したあまたの稀覯本。
三万数千冊とも言われた蔵書は、彼の死後散逸。
当時は、書籍は知で有り財でもあった。
いまや素材ゴミ予備軍。
価値のわからない痴愚魯鈍の手に渡るくらいなら、
いっそ焼却でもするか。
けだし蔵書一代なのです。
寒村にも図書館くらいはあるが、ライブラリーとして
並べるにはあまりにエキセントリックな書籍が多く迷惑だろう。
稀覯本が沢山あるわけでもないが、いまでは手に入らない書籍も多い。
TSUTAYAの買取査定士では歯が立たないわなあ。

しばらく前に新刊ミステリーの文庫を買いとらした際に
冗談で査定させたが、抱腹絶倒。
谷崎の文章読本、高山樗牛訳のツアラツストラ(いずれも初版)は
ゼロ円評価。
ゴミ出しが面倒だから持って帰れといったが(^^)


多少まともな古書肆のオヤジを呼びつけ、庭先に
書籍を積み上げ...

一山ナンボで買いなはる?
◯◯で如何ですか

無言で何冊か焚き火に投げ入れる

ナンボで買いなさる?
◯◯では

またまた、無言で何冊か焚き火に投げ入れる

ナンボで買いなさる?

.....

中国の古説話にあるエピソード
古書肆のオヤジならこの程度は知っているはず。
売り物はだんだん減っていくが、値段が下がる訳ではない。
早めに高値を付けないと買う物がなくなる。
売り手は、カネが欲しい訳ではない。
古書肆のオヤジを値踏みする楽しみを味わっているだけ。

炎夏にやる戯言ではないのですずしくなったら
やってみるか。


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