2018年9月20日木曜日

官能あるいは夏の嵐



ベルディのイルトロヴァトーレ(吟遊詩人)は、
キャベツのように入り組んだ荒唐無稽な筋書と天上の迦陵頻伽のような
美しい音楽が奇妙に融合したオペラ
日本の舞台でライブに観れるのは数年に一回程度の希少種


ヴィスコンティの夏の嵐の冒頭のシーンでは、
独立前夜のベネチアの歌劇場でこのオペラが上演されています。
のちになって道ならぬ邪恋に陥る貞淑な伯爵夫人とジゴロなオーストリア士官が
出逢い....折しもオペラに触発された市民が独立を叫び劇場は騒然となる。


この映画にこのオペラが使われたのは、ヴィスコンティの計算の上だとは
おもうのですが、どんなオペラかの知識がないと堪能も感動も出来ない。
理解できるものだけが楽しんでくれれば良いと言わんばかりの...
冷たく傲慢な貴族趣味とはかようなものか。

日本初公開の際に映画評論家から全く無視されたのは当然のこと
50年代の倭国にはまだまだ贅沢すぎる
今回METの舞台を観て、初めて得心した。
所詮大衆娯楽なんだから、細部の薀蓄にこだわることも無いが、
オペラと映画の構造の二重螺旋がわかると更に面白い。

オリジナルタイトルは「官能」
それを「夏の嵐」と邦題をつけたことに塩野女史はいたくご立腹。
女史は映画について語ることはありますが、
オペラについては記憶がない。
半世紀以上もイタリアンなんだから、知らないはずはないし、
確かに、そんな叙情的なお話ではない。






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