2018年10月17日水曜日

奇跡という美談の背景には

実際にハドソン川の着水事故が発生したのは2009年の頃。
旅客機の墜落事故で死者ゼロが奇跡でなければ、何が奇跡なのでしょうか?
それにバードストライクによるエンジンの完全機能停止が原因だった由
短時間とはいえ(実話としては208秒間)飛行していること自体も奇跡に近い。
機長は英雄と称えられ、大統領就任式にも招かれ、職場復帰も果たして最後はハッピーリタイアメントだったはずだが.........



2012年に公開されたのが「フライト」
豪胆な操縦で、旅客機の不時着に成功!
死者が乗客乗員含めてたった四人ならば、惨事には当たらない。
当時の記憶が多少曖昧なんですが、ハドソン川事件に絡めての映画批評はなかったように思います。
つまりこの映画は、エアークラフトスリルサスペンスではなく、
勤務の合間を見つけてはCAとヤリまくるアル中でコカイン常習癖な機長の人間ドラマなのですから、
同列に並べるべきではないというのが大方の視座なのでそういう事になったのでしょう。
が、しかし・・・・






今回は2015年の制作。

素材吟味の確かさ
堅牢な演出
業界から畏怖されるが故に結集する才能

当たり外れがなく安心して見ていられる映画人の作品なんですが、
イーストウッドは、いったい何を考えてこんなありふれた感動をウリにする映画を......
しかし、彼の手にかかれば、予想もしないドラマになってしまう。

スクリーン外で語られない背景は当然分からない。
結果がよければプロセスの解明はどうでもいいというような粗雑なことは考えない・・・というような綺麗ごとだけではなさそうです。
保険事故にしたくない(あるいはしたい)とか機体の欠陥なんてあってもなかったことにして欲しいとか
関係者の思惑が色々あったんでしょう。
機長の果断でアクシデントの内容の割に最善の結果に終わった筈なのですが、
事故調査委員会のデータとシュミレーターによれば、付近の空港に着陸可能であり、
機長は最善でない対応により乗客を危険に晒した......という疑惑となった。

ヒーローが一皮剥けばとんでもないキャラとはありげな話です(「フライト」では事故後に風船を膨らませた結果アルコールが検出されたことが
大騒ぎの発端になる)
これが事実ならば未曾有の醜聞となる。
機長だって、サイドビジネスが苦境で銀行とトラブってましたから、ハイエナにとっては舌舐めずりしたくなるテーマ。
英雄から一転殺人容疑者ですよ。


疑惑が晴れ、お話は最初に戻るが、
フライトの方は、後味の良い有罪判決となった。



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